道を違えるな

この頃、週刊少年ジャンプの作家になった後のことを構想しています。
連載作家や読者が『疎む』ような生意気で勢いのある作家だとか、確かな質の良い漫画を作る『ヒール』作家として挑むことを考えています。
20前半の武器は『尖れる』ことだと思うので、ここを攻めます。
言動、行動、努力量。
実力はもちろんガチガチに固めないといけません。
憎めない魅力的な悪として応援してもらいます。
ここで突き抜けます。
出来るのでやります。

足を洗った(場合によっては侵入するし、盗むこともある)泥棒が『誰かが密室へ入って殺人をすることが可能かどうか』を泥棒の経験や視点からのアプローチで解明していく本格ミステリ

貴志祐介の硝子のハンマーを読み終えた。
かねてより作者の作品が大好きな僕には手に取らない選択はなかった。
貴志祐介の魅力は豊富な語彙、徹底的な取材や細部のディティールの誰にも劣らない細やかさではないか。
彼のクリムゾンの迷宮で情報の大事さを、青の炎で倒叙ミステリへの興味を得た。
天使の囀りではあまりの情報量に舌を巻いた。
ダークゾーンやエンタテイメントの作り方も読んだが、いずれも外れることはなかった。

今作で学んだことは
『嘘、復讐、殺したら負け』
『ミステリを作るなら別解をつぶせ』です。

『嘘、復讐、殺したら負け』について
貴志祐介の倒叙ミステリといえば、僕の中で青の炎が燦然と輝いているのですが(今も変わりません、あれは最高です)今作の硝子のハンマーも後半から倒叙作品へと姿を変えます。

『倒叙』とは『現在から過去へ、時間を逆にさかのぼって叙述すること』と辞書には記されています。

倒叙ミステリとは、『現在起きた事件から、犯人が犯行に手を染めるまでの時間に遡って犯人の目線で叙述(順を追って述べること)すること』です。
この手法で犯人の気持ちや犯行に至るまでの行動原理が細部に至るまで描写することが可能です。
それによって、犯人にも感情移入の余地が生まれ、読者はより作品世界に没入したり、ドラマ(犯人や登場人物の葛藤や思い)を垣間見ることが出来るのです。

前線で活躍している本格ミステリ小説に引けを取らない倒叙ミステリを、少年漫画にデフォルメして少年ジャンプで連載したら面白いなぁなんて考えていたりします。

それはさておき、この硝子のハンマーの犯人(名前や正体は伏せます)ですが、なかなか不遇な人間なのです。
これも生い立ちを見せられたからこそ抱く感想です。
親がどうしようもなく、ヤクザの借金を肩代わりさせられそうになり、計画的に闘争に成功したけど、その後は日陰者の生活を余儀なくされます。
環境さえ違えば大学へ行き、通っていた予備校の女の子と付き合い、立派なオフィスでバリバリ働いていた未来をこの犯人は夢想するのです。
その環境を一新出来ると信じて今回の犯行に及んだのです。

この小説の見所はなんと言っても元泥棒の探偵役がワトソン役の弁護士と議論を重ね、仮定を作り、実験し、検証するところ。
その結果が外れてもいいのです。
選択肢が絞り込まれ、最後には犯人が浮かび上がるのだから。
防犯の穴を一つずつ潜り、密室の解明に近づき、犯人の綿密に練り上げたトリックや執念に脱帽するところでしょうか。

犯人の人生は、あまりにも過酷でした。
しかし、犯人は人生の一発逆転に『殺し』をしてしまった。
最後、泥棒探偵の榎本が『本当なら折半で良かったと言いたいところですが、あなたは人の命を奪いました』と言っています。
人の命を奪う、それは取り返しがつかず、老い先1年が無かろうと、死ぬに値する酷い人間であろうと、奪った金品が会社から横領したものであろうと、辛い人生を歩んできた人が犯人であろうと
『殺したら終わり』
その言葉が、僕の胸を強くどつきました。
犯人の気持ちになれば、なんだか悲しいですが、僕らに人の命をどうこうする権利は持ち合わせていない。
逆も然りですが。

その後、署に弁護士と同行出頭します。
弁護士は乗り掛かった船だから、その犯人の弁護を担当します。
しかし、犯人は『嘘』をつくのです。
本当はヤクザに仕向けられた、と。
『殺し』たのはそのせいだと。
それは、人生をめちゃくちゃにされたヤクザへの『復讐』でした。

この世には『優しい嘘』と『それ以外の嘘』があります。

優しい嘘は、大切な人を危険に晒したり巻き込みたくないからつく引き離したい嘘。

それ以外の嘘は、自分のためや『復讐』のためにつく嘘

それ以外の嘘は、きっと虚無しか生まない。

犯人は、虚無を生んだ。
それを連れてきたのは『復讐』だ。

『何があっても、殺し一つで人生の道は違える』
『味方がいても、嘘一つで虚無に還る』
『復讐一つで人生から彩りが消える』

大きく感じたことは『殺しとは』
小さく感じたことは『嘘、復讐』

『ミステリを作るなら別解をつぶせ』について
これは、さっき書いたように選択肢を絞り込むことですね。
作者が思い浮かぶ別解を探偵につぶさせる。
個人的な、作品へ転用するならメモです。

倒叙ミステリを少年漫画で作る野望を抱いて、今日も生きます。

良い一日をお過ごしください。

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