47都道府県各地で手持ち花火をして、似顔絵を描いて廻るヒッチハイク旅 22日目見聞録 3項目
8月25日 22日目
守谷SAまで乗せてもらった後、花火をするべくSAを出た。
サービスエリアは大抵徒歩で外へ出ることができるから、目ぼしい川が傍にある度に花火を終えられた。
47都道府県各地で花火をする決まりを遵守する上でとても旅の中で重宝した。
利根川が近くにあった。
茨城と千葉の県境になっている川で、僕は思わず膝を打った。
この川で2つとも終わらせられる、と。
後々、その考えは甘いものだったとほぞを噛むが仕方がない。
今となってはいい思い出だ。
ふらふら利根川に向かって歩いていた。
パシャパシャと相棒のNikonを振り回していた。
そんな折、とても心地よいオカリナの奏でた旋律がさざなみのように耳に届いた。
声をかけようかと思案したが、邪魔をするのは野暮かと考えた僕の花火をしに向かう足が止まった。
その主であるおじいさんが声をかけてきたからだ。
Mさん
元JR職員の方だった。
定年後にオカリナを吹き始めた。
もう5年目だ。
吹くためにシートを広げて、簡易折り畳み椅子を用意し、木陰で午前中の時間を過ごしている。
役職が最も上になった後、皇太子ご夫妻が新幹線旅行をするときの付き人に出向。
かつては親父さんの建設業を継いで、やめるときは揉めた。
その後、リニアの技術職を経て、国鉄に誘いを受けてJRの職員となった。
18歳で同い年の女の子と結婚して、20歳で子供を授かったそう。
一番楽しかった時期は、高校生。
数十年生きてきた人に高校生が1番楽しかったと言われて、すでに過ぎてしまったことにほんの少し絶望した。
その人曰く、20代のうちにやっておいた方がいいことは、海外に出ること、青年海外協力隊や海外ボランティア、ワーキングホリデー等で外の世界を知ることを勧めていた。
また、しっかりお話を伺いたいと感じた。
連絡先を尋ねると携帯電話がないと言ったり、手紙を書きたいから住所を教えて欲しいと聞いてものらりくらりだった。
そうこうしていると電話が鳴った。
僕ではなく、Mさんだった。
持ってた。
奥さんが遅いから心配しての連絡だった。
また、ここへ来たら会える、また会えるさ。
こういう機会は一期一会だ。
そう言っていたMさんへ、せめて、こうして旅をしている男に出会ったことを覚えていて欲しくて、似顔絵を描かせていただいた。
お返しとして、使っていなかったオカリナをもらった。
不良品だそう。
旅を終えた今も傍にある。大事なものだ。
きっと、あそこへ行くと、また会える
また会いに行く。